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インタビュー

Vol.1-Part.2 巨匠写真家 山岸伸さんの一人語りによるギャラリートークより

続いて球体関節人形のコーナー

3年前に慢性骨髄性白血病という病気になり、入院して抗がん剤治療をしました。現在は薬を飲みながら毎日仕事をしてますが。入院した時は病室で「たぶんこりゃダメだな、死ぬんじゃないかな」と思ってましたんで、入院した15日間の間に事務所の整理とかやらなければならないことを何個か考えていました。その時に送られてきた資料の中にこの人形の本があったんです。僕はそれまで人形の世界はよく知らなかったけど、すごいと思って出版社に連絡して「この人形の写真を撮ってみたい。協力してくれる作家の先生を紹介してください」とお願いしました。それで何人か紹介してもらったんですが、その中で「いいわよ、私の人形でよければ撮って」と、快く人形を提供してくださったのが、大竹京先生だったんです。

それでうちのアシスタントが先生がすぐに送ってくださった人形を、これは粘土でできていてすごくもろいものなんですが、小指をポロッと折ってしまったんです。でも先生は「いいわよ、壊れるものなんだから。送ってくれたら直すから」と言ってくださって。修復していただいてまた撮り始めるんですけど、どうしても気を使い過ぎてしまってなかなかうまく写真が撮れない。結局先生に無理を言って1体50万円で買わせていただきました。本当は1体200万円くらいするらしいんですけど。

人形を先生からいただいて、自分が弱くなった時にもこの人形を撮っていたらなんとかなるんじゃないかという思いが湧いてきて、気持ちがなんとかなってきました。
もう少し深く撮っていったら、おそらく世界に持っていっても通用するものになると思っています。僕は人形を人間だと思って撮っていて、それは他の人形を撮る方法とは違った方法なんです。グラビア写真と同じ場所で、実際人形に話しかけながら撮っています。

2年前、某カメラメーカーに呼ばれてジャカルタで講演と撮影会をした時に、写真を貸してほしいと言われたんですが、水着の写真はNGが多くて。その時この人形の写真を出したんです。そうしたらその写真を見たドイツのカメラ雑誌から掲載させてほしいと言ってきて、去年その雑誌に載ったんです。雑誌のHPには今でも写真が載ってますよ。

そんなふうに自分では動かないのに人形が勝手に動いてくれまして、去年はロシアでも作品展みたいなこともやらせてもらいました。徐々にですがこの人形と何か新しいものができる気がしています。

僕は熱海に縁があって、市長や市会議員の方にお世話になっています。そんなことで熱海の指定有形文化財にもなっている「起雲閣」で撮影をさせてもらいました。人形が被写体のバック(背景)には最高の場所です。これは写真展のために作っていただいた1体です。

ここにあるのは自宅から持ってきたABCDEという名前が付いた5体の人形です。普段はこのままの状態で家に飾ってあって、仕事から帰って部屋に入って電気をつけると、感じ方は人それぞれなんですが、先日遊びに来たカルーセル麻紀さんは入った瞬間「気持ち悪いヤダヤダ」って出て行っちゃいました。魂が入っているものではなくて……いや、僕が入れちゃったから入ってるね(笑)

洋服を脱ぐと女性の身体そのままに作ってあります。僕は女性のヌードも撮ってますし、決して興味本位ではなく、そのうちどこかで人形のヌードの写真も発表しようと思ってます。

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